
新型インフルエンザ予防に緑茶うがいをする児童たち=静岡県島田市の五和小学校で
体にいいといわれる緑茶。含まれる成分が、抗ウイルス作用や抗酸化作用といった働きがあることも、動物実験などの研究で明らかになっている。最近は、ヒトにも有効とされ、緑茶によるうがいを新型インフルエンザ予防などに活用する動きが広まっている。 (鈴木久美子)
「ガラガラ…」
茶畑に囲まれた静岡県島田市の市立五和(ごか)小学校で、体育の授業後に外から帰ってきた子どもたちが、水飲み場で次々とうがいをする。使用しているのは、水ではなく緑茶だ。「給茶機」が設置されているので、蛇口をひねると水のように緑茶が出る。
「風邪やインフルエンザの予防に、手洗いと一緒に『緑茶うがい』を呼びかけている」と鈴木しめ子教頭。同校では3年前に給茶機を導入。今後市内の小中学校に増やす予定だ。
インフルエンザウイルスは、のどなどの細胞に吸着し感染するが、緑茶に含まれる成分「カテキン」が、それを阻害する抗ウイルス効果があることが分かっている。
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静岡県立大学食品栄養科学部教授 伊勢村 護

お茶の抗がん作用については、広く知られるようになった。緑茶や茶カテキンが発がんやがん転移を抑制することは多くの動物実験で確かめられており、例えば24件の抗がん作用に関する論文の中、22件でこの作用が認められたとする論文調査上の検証結果が、米国の栄養学専門誌に昨年報告されている。
ただ、ヒトについては最近の疫学調査の研究においても、緑茶飲用ががんリスクを「下げる」とする報告と「下げない」とする報告があって定まっていない。このように結果が一致しない理由として、飲用するお茶の種類、量、濃度などが十分考慮されていないことや、喫煙などの他の影響を完全に除くことができないことなどが考えられる。尿や血液を用いて、茶の摂取量を定量化した疫学調査研究が今後求められる。また、本コラム11月8日掲載の臨床試験の結果が待たれるところである。
最近、緑茶成分の遺伝子を介する作用として、「腫瘍(しゅよう)壊死因子アルファ(TNFアルファ)」に対する作用が注目されている。数年前に藤木博太博士らは、名前とは裏腹に、TNFアルファはがん進展を進める重要な因子であることを明らかにし、緑茶主要カテキンのエピガロカテキンガレートがヒトの胃がん細胞株のTNFアルファ遺伝子発現を抑制し、細胞からのTNFアルファの放出を抑制することが、その抗がん作用に深くかかわっていることを報告した。 続きを読む »